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東京高等裁判所 平成2年(ラ)129号 決定 1990年6月29日

抗告人 川畑孝夫

相手方 川畑かよ 外1名

被相続人 川畑義太郎

主文

原審判を取り消す。

本件を静岡家庭裁判所沼津支部に差し戻す。

理由

一  抗告人は、主文と同旨の裁判を求め、抗告の理由は別紙「即時抗告の申立」書記載のとおりである。

二  当裁判所の判断は次のとおりである。

1  抗告人は原審判により「寄与の権利を不当に奪われた」旨主張するが、右は抗告人の寄与分の主張と解されるところ、抗告人は原審において寄与分を定める申立をしないと述べ、現にしていないのであるから、仮に抗告人の寄与分が遺産分割審判において考慮されていないとしても、これを不服の理由とすることはできない。

2  ところで、原審判は本件遺産につき、相続分のとおりの共有持分を取得する共有形態による分割方法をとつている。そしてその理由とするところは、<1>現物分割が困難であること、<2>原審判別紙遺産目録記載(1)の建物(以下「本件建物」という。)を、抗告人、相手方川畑かよ(以下「相手方かよ」という。)のいずれに取得させても代償金による調整を要することとなるが、その支払が期待できないこと、<3>将来両者による本件建物の住み分けの可能性もないわけではないことを挙げる。たしかに、一件記録によれば、本件建物とその他の遺産との経済的価値には格段の差違があり、結局本件建物の分割が避けられないが、本件建物が1棟の店舗兼居宅であつて、構造上それ自体分割することが困難であるばかりでなく、抗告人夫婦と相手方かよとの仲が極めて険悪で、相互に根強い不信感を抱き、同居生活はもちろん住み分けも困難であり、双方の資力の点からも代償金支払の可能性が薄いことが認められる。しかしながら、双方が互いに譲歩の意思を全く示していないのであり、従来の経過からみても、現時点において将来の融和の可能性は絶無に近いものとみざるをえない。そうだとすると、右の事実関係の下に分割方法についての見通しを説明した上、なお双方で互譲の意思を示さないならば、本件建物をいずれかに帰属させ、その過剰取得分は代償金の支払により調整する分割方法をとるほかはなく(この場合における代償金の支払の困難は、これを命ぜられた者にその責任において解決させるほかない。)、これを共有とする分割方法は、単に現在の本件建物の使用状態を維持したまま紛争の解決を先送りにするにすぎないものであつて相当とはいえない。しかもそれは早急な紛争の解決を望む高齢な相手方かよの意思に副わず、引延ばしを策する抗告人にくみする結果となりかねないおそれがある。

なお、原審においては遺産の評価を行つていないなど分割の基礎資料の収集が十分ではないのでこれらの点について審理を尽くす必要がある。

三  そうすると、原審判は取消を免れないから、本件を原審に差し戻し、更に審理させることとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 丹野達 裁判官 加茂紀久男 新城雅夫)

(別紙)

抗告の理由

1 原審判は抗告人の遺産分割における寄与の権利を不当に奪うものであって取消されるべきものであります。

2 すなわち川畑かよ(以下母と言う)の審判の申立した経過を振り返ることにより、判明するものと考えます。長井明子(以下妹と言う)が子供は親を扶養する義務があると言う事で有無を言わせず連れ出し同居後、母の生活費はどうするの、と言う事から扶養料の支払を求め出来なくば遺産分割だと審判を求めた結果扶養料の支払一年間の遺産分割を禁ず、この審判にたいし遺産分割を禁ずる事は不当と言う趣意がわかりません遺産分割を求めるからには当初の扶養料の支払は不用のものと考えます。あきらかにその場その場の状況により言語を左右にし荒地と言われている○○は作業小屋と作業場○△は約4分の1が倉庫4分の1が野草と果木畑4分の2が畑として使用している現状は母も認識している事実でこの様に裏付け出来る証拠があるにもかかわらず事実を平然とまげるなどは一事が万事を物語るものであり真意と信頼に乏しい申立にもとずく調査書も公平に乏しいものと考えます。妹夫婦にも姑がおり現在別居中ですが時折り同居話しが持ち上がる、現状を考えたとき母の長い同居は不可能と考えるべきで母の兄弟(沼津、三島に住居、男1人女5人)の話し合にも他人の家の事に口を出さないでと釘を打ち、母のアルトハイマーの病症の有無の診察をも反対し何事も受け入れぬ頑固さで、話し合を拒むのは母と妹であり母の兄弟も母と妹の軟化を見守り待機中です。又本件の呼出でも、まず金額の不詳なものや金品の受け渡しのないもの、子育て期間は従事とはならない、など審問の回答で認められなく審問の不要を感じ不本意ながら2回の呼出しを拒否し抗議の意思を表明しました。再度根本より正した上で正しい調査書にもとずく公平な審判を求めます。

3 よって抗告の趣旨の通り裁判を求める次第です。

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